折り返し地点で見えた光〜J2第21節 アルビレックス新潟VS大宮アルディージャ〜

レビュー

厳しい展開でスタートした鹿児島戦は1−0のビハインドから今季初の逆転勝利を飾った新潟。今節も勝利し波に乗りたいところ立ちはだかるのが16戦無敗で2位と安定した戦いをみせる大宮。鹿児島戦の前半はサイドハーフ-ボランチ間が緩くボランチに負担がかかることでバイタルエリアを突かれ続け、不安定な戦いを見せた。しかし後半にはしっかりとバイタルを消すような守備に切り替えてロングカウンターで勝利を飾った。大宮は3-4-2-1で常にバイタルでハーフスペースに選手を置ける布陣であるかつ、戦力も充実している。そんな相手にどのような試合の入り方をするのかが見所である。

整理された守備組織

これまではほとんどロングボールを前線に蹴り出すキックオフであったがこの日は違い、自陣から繋いで前進しようとしていた。今日はビルドアップを重視しようという姿勢が見て取れた。大宮は3バックでボール持ちながらシモヴィッチを起点に崩そうとする姿勢が見れる。

 そして守備では前節鹿児島戦前半とは違い、全体がゾーン2(ミドルゾーン)で待ち構え、内に絞りコンパクトな陣形を整えて守備に入った。大宮の陣形は3-4-2-1。新潟が比較的苦手とする陣形である。3-4-2-1が相手だと何が困るのか。

  • 相手のDF3枚に対し、前線2枚で対応する形になり数的優位を作られる(=誰か1人が空くので楽に前進される)
  • 相手2シャドーをボランチが担当すれば相手のボランチがフリーでボールを持てる。
  • 相手WBが大外で開くとシャドーがハーフスペースに立つので捕まえづらい。(サイドハーフ-ボランチ間、DFラインMFライン間にポジショニングされる)

とにかくこちらの4-4-2の守備に対して、弱点であるようなスペースに常に人を置かれるので下手に単独でプレスに出てしまえば簡単に交わされてフィニッシュまで持っていかれてしまう。

このような問題に対して新潟は前述したような形をとり対応した。

前線2枚(レオナルドと高木)はDF3枚にアプローチに出て行かず放置して、ボランチを消すような動きでボールホルダーの選択肢を消し牽制。サイドハーフは内に絞って外にボールを逃がすようにポジショニングし内に密度をあげる。ボランチは中にボールが入れば獲物を狩るようにボールを奪取する。CBはシモヴィッチが起点になる動きについて行きアプローチを仕掛ける。相手DFを放置して受け手への圧力を高める選択を取った。

ゾーン2で待ち構えることにより守備での選手同士の距離感が良くなること複数の関係でボールを奪うことが増えたことがこれまでの守備からの修正点であると考える。

この守備の良いところが詰まったシーンは前半8分の戸嶋のシュートまでの一連の流れだ。ゾーン2で待ち構え、相手の右CB畑尾から中盤に降りて起点となるシモヴィッチの落としのボールを狙った戸嶋が結果的にトラップミスとなったボールを奪いレオナルドへ。戸嶋はボールを奪った勢いそのままに先ほどボールを出してそのままビルドアップのサポートのポジショニングで前に少し出ていた右CB畑尾の背後に走り込みそのまま持ち込んでシュート。

中の密度が高いのでシモヴィッチや2シャドーに良い形で起点にさせない新潟の守備である。

大宮としてはDF3枚、特に左右にCBがこちらの2トップ脇のスペースを起点に攻撃の糸口を探りながらボール保持で試合を進める前半序盤であった。

新潟も後ろからビルドアップで崩していこうという姿勢を見せるが大宮の前線3枚でボールを外に逃してからWBが迎撃するような守備に対して外でボールが詰まってしまうことが多くなかなか前進できずにボール保持がうまくいかない。なおかつ奪う位置は低いのでチャンスを作れずにいたので序盤は大宮がボールを握り、新潟が構えるような構図で試合は進んでいった。

そんな中、前半18分に河面の逆足とは思えない高精度のクロスからマークを外して内に入ってきたシモヴィッチにヘディングを決められて先制点を許す。できればなんとかシモヴィッチに体を当てるなりシモヴィッチに良い状態で合わせられないようにしたかった。

【公式】ゴール動画:ロビン シモヴィッチ(大宮)17分 アルビレックス新潟vs大宮アルディージャ 明治安田生命J2リーグ 第21節 2019/7/6

ビルドアップを司る岡本將成

前半20分頃に三門が負傷交代したあたりから徐々に新潟がボールを持ち始める。ゾーン2の右サイドに高木や戸嶋、新井を起点に攻める場面が数多く見られた。三門がカバーしていたエリアでもあり、相手の守備は5-2-3の中盤2の脇になるので比較的スペースのある状態で受けやすいエリアになっている。ここのエリアはシャドーが頑張って戻るか、右ウイングバックが前進して埋めるか、ボランチが気合いでスライドするかになるので大宮の泣き所と言える。

シャドーが戻ればそれだけ負担が増して攻撃に出て行きづらくなり、右ウイングバックが前進すれば5枚の守備を1枚減らしてスピードのあるフランシスをCBと勝負させられるような状況になる。ボランチが埋めれば中央は空く。新潟の同点シーンもこのエリアからの高木の素晴らしいアーリークロスからであった。対応したのが攻撃的なシャドーの奥抜であったからこそ高木のようなクオリティであれば余裕を持って精度の高いボールを送り込むことができる。レオナルドもCBの間に位置どり誰がマークするか曖昧な状況を作りゴールに結びつけた。

【公式】ゴール動画:レオナルド(新潟)32分 アルビレックス新潟vs大宮アルディージャ 明治安田生命J2リーグ 第21節 2019/7/6

得点後も新潟がボールを保持する展開であった。ここで目を引いたのはホーム初先発となったルーキー岡本將成である。岡本はシモヴィッチの脇のスペースを前進しながら相手を引きつけ、中盤から前線にスペースを与え、1手先、2手先に良い状態でボールを供給していた。現代のサッカーではCBに求められるビルドアップ能力を岡本は持っている。

例えば35分のシーン。シモヴィッチの脇まで前にボールを運ぶ岡本。右SBの新井はポジションを上げることにより相手シャドーの奥抜を牽制し岡本に運ぶスペースを作り出します。シモヴィッチは岡本へのアプローチが遅れるとなると、相手ボランチの1角が岡本にアプローチに出てきたところで戸嶋がフリーになり、高木を経由して良い状態でボールを持つことができた。

このような岡本のプレーは、周囲が良いポジションを取れれば相手の陣形を崩しボールを前進させ易くなる。

そんなプレーを嫌がってか、奥貫を左から右に配置し、シモヴィッチの脇を消すように5-2-3から5-3-2のような形(シモヴィッチと奥抜で前を2枚に。バブンスキーはシャドーから中盤に加わるような形)にして前半終了間際は対応していた。

フランシスのオフザボール

後半は大宮のロングボールでキックオフ。後半55分に高木がサイドでポジショニングすることでウイングバックが前に出れないよう牽制し新太とカウエ、渡邉泰でボールを回しながらカウエが良い状態で前を向く。カウエがボールを受ける瞬間に逆サイドのフランシスはDFラインの背後に走り込みカウエの素晴らしいボールを受けるとゴールに押し込んだ。相手の中盤の人数は少ないのでカウエは良い状態でボールを受けることができた。フランシスはこのようなDFラインとの駆け引きがうまい。左で作って対角のフィードでフランシスを背後に走らせる形は今後も大きな武器になるだろう。素晴らしいゴールであった。

【公式】ゴール動画:フランシス(新潟)59分 アルビレックス新潟vs大宮アルディージャ 明治安田生命J2リーグ 第21節 2019/7/6

その後は大宮が大前やファンマを投入し仕掛けてくるが、気持ちの乗った守備組織で耐え抜き2−1で2連勝を飾った。

強力なカウンターは後半巻き返しの鍵になる

新潟の勝利の要因としては、相手の中盤2枚の脇のスペースをうまく使えたこと、最後まで守備組織を構築できたこと、さらに強力なカウンターで相手のDF3枚の脇をアタックできたことだと考える。最後に体を投げ出して守備したりとメンタルも乗っていたが、大宮戦に向けての準備が良かったように思える。

守備組織については片渕前監督の時のようなものになっていたが違いはカウンターにある。今はフランシスや渡邉新、さらにはボランチの戸嶋までスピードのある選手が揃っているのでレオナルドや高木を追い越し相手の空いたスペースを素早く突くことができる。

ここまでサイドハーフの守備の緩さが致命的な問題となっていたが守備組織が整理されたことで良い方向に向かっているように見えた。

この整理された守備組織からの高速カウンターは後半巻き返しに向けて大きな武器になるだろう。

前半最後の試合で光が見えた。そんな試合であった。

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