勝負師の一手〜J2第30節アルビレックス新潟VS柏レイソル〜

アルビレックス新潟2019

11連勝中とJ2では頭抜けた戦力でJ1昇格筆頭候補である柏レイソルと対戦した新潟。前回対戦時は粘り強く守り抜いたものの、最後の最後でオルンガに決められてしまい敗戦となってしまった。
前回よりも守備が不安定な中、ここ数試合序盤に点を決め試合を優位に進めていた柏レイソルに対してどこまで食らいつけるかが注目であった。

柏は4-4-2。対する新潟は4-2-3-1。ただし守備時は4-4-2に変化するためシステムの噛み合わせ上、普通にシステム通りに動けばマッチアップが明確となりフリーな選手は生まれにくい。お互いがどのように選手を動かし、ボールを前進させるのか。それに対してどのように守っていくのか。

力関係を考えれば柏が優勢の展開になるだろうと考えられていたが試合が始まってみると実際に優位にゲームを進めたのは新潟であった。

◼️躍動する右サイド

序盤から新潟は攻勢に出たがポイントになっていたのは右サイドであった。開始1分には外に張ったフランシスがボールを受け柏左SBの古賀を引っ張り出し、CB-SB間を広げ、そのスペースにシルビーニョや戸嶋がボールを受けたり、フランシスが新井に預けて自ら作ったスペースに侵入するなどが続いた。

このスペースを使うことで先制点を奪うことになるのだが、試合後のレオナルドは「相手の左サイドの選手はボールへの寄せが遅れる、弱さがあるという分析があった。」と語っており、スカウティング通り再現性を持って柏の守備陣を脅かしたことが分かる。

ここで効いているのは新井のポジショニングである。吉永監督が就任してからは度々観察できているが、通常よりも内側にポジションをとる所謂「偽SB」のポジショニングをとっている。

この「偽SB」によりマーカーであるSHが中に寄ることにより、CB→SHのパスコースが開通する。その利点はフランシスが前を向いてボールを受けやすくなる事によりプレーの選択肢が増えることだ。

通常のようにSBからSHにパスを通せばフランシスは背負ってのプレーを余儀なくされる。「偽SB」は容易にレシーバーに次のプレーの選択肢を増やすことができる仕組みである。

こうして古賀を引っ張り出し空いたスペースを使い続けた新潟の作戦が功を奏したのが12分の先制点のシーンである。

内に絞ってボールを受けた新井からフランシスに斜めにパスをすることでフランシスがオープンな姿勢(選択肢が増える姿勢)でボールを受ける(①)。

古賀がフランシスにアプローチすることで古賀とCB鎌田のスペースが広がり、シルビーニョがそのスペースに飛び込む(②)。ボールを受けたシルビーニョはCB鎌田をサイドに引っ張り出すことに成功した。

そしてエリア内に侵入する動きを見せておくフェイクでエリア外で止まってフリーになったレオナルドへマイナスのクロスを上げ、レオナルドは落ち着いてシュートを決めた。

レオナルドのマーカーをはずす能力とシルビーニョの高い技術力が光ったが、試合を通して再現性を持って右サイドの攻撃を仕掛け続けたことが素晴らしかった。

【公式】ゴール動画:レオナルド(新潟)13分 柏レイソルvsアルビレックス新潟 明治安田生命J2リーグ 第30節 2019/8/31

前半から何度もこのスペースを突き続け得点にこじつけた。試合を通して両サイドで相手のSBを釣ってスペースを作り、そこに選手を飛び込ませる形を何度も見せていたことからまさに狙い通りの得点であったことがわかる。

その後ボール保持は柏が握っていたが要所でカウンターを仕掛けた新潟は前半を通して攻勢に試合を進め、前半を終えた。

◼️勝負師ネルシーニョの一手

前半は新潟が攻勢をかける展開となったが、後半に柏は精彩を欠いていた右SBの田中に代えて中盤のサヴィオを投入する。

柏には右SBを務められる選手はピッチに居らずどのような配置になるのかが予想できない事態になった。

新潟は円陣を組んでいる途中に新太が輪から外れ対応を確認しにいったところからどれだけ新潟の選手たちに混乱が生まれたかがわかる。

前半の良いムードを後半に持ち越したかった新潟だがネルシーニョの早々の一手に頭の中を持っていかれるような形となった。

■ 新潟を押し込んだ采配

後半が開始しどのような配置になっていたかというと、田中の代わりに右SBを務めているのは左ウイングでの瀬川であった。

瀬川によると、ぶっつけ本番の起用であったとのことで、さすがは勝負師ネルシーニョである。

この選手交代は新潟に混乱をもたらしただけではない。新潟のストロングポイントを抑え、弱点を突くような一手でもある。

柏は前述したように右SBの田中に代えてサヴィオを投入。
システムを4-4-2から4-1-2-3に変更する。

右SBに瀬川を置き、中盤の底にはヒシャルジソン、その前を大谷と江坂。左にサヴィオ、中央のセンターフォワードにオルンガ、右にクリスティアーノという配置であった。

このシステム変更は主に二つの特徴があった。

1つは中盤の底にヒシャルジソンを置き、前半の新潟の攻撃のポイントとなっていたシルビーニョの自由を奪ったことである。

前半の給水タイム以降、ライン間でボールを受けチャンスを作り続けたシルビーニョに対しての応急処置としてアンカー気味に大谷が振る舞いマンマークについていたが、後半はよりボール奪取力の高いヒシャルジソンをシルビーニョに当て、更に自由を奪った。その徹底ぶりは柏の攻撃時にもヒシャルジソンはシルビーニョから離れなかったことである。

2つ目はサイド攻撃を活性化させ、新潟のSH自陣に押し込んだことである。

柏は中盤にインサイドハーフ(以下IH)を置くことで両サイドにトライアングルを作り両サイドの攻撃を活性化させた。

新潟のSHは人についていく傾向があるのでSBが高い位置を取ることになるとDFラインに吸収されてしまう。こうなってしまえば、いざ攻撃となった時になかなか前に出ることができなくなってしまう。

柏はビルドアップ時には新潟の2トップの脇にIHが降りることでフリーでボールを受け起点となり、SBは高い位置に陣取った。(2トップの脇は、ボランチもそこまで前にプレッシャーをかけに行けば中央が空いてしまい、ついて行き辛い。)こうすることにより新潟のSHは下がらざるを得なくなり新潟のカウンターの威力は半減することとなる。


①大谷(IH)は2トップ脇に落ちる
②古賀がサイドの高い位置をとりフランシスを牽制(フランシスは古賀についていく)
③サヴィオは中に絞りSH-CH間にポジショニング

・大谷に戸嶋がついていけば中央ががら空きになるので戸嶋はついていくことができない
→大谷がフリーでボールを受けられる。
・古賀が高い位置に移動すればフランシスもついていく。
→カウンターの威力半減
・フランシスと戸嶋の間は広がっているのでサヴィオがその間でボールを受けることでどちらが(フランシスか戸嶋)マークに着くのか曖昧になる。

頼みの綱であるシルビーニョには前述の通りヒシャルジソンが徹底してマークについており、キープ力で新潟の攻撃を支えるレオナルドには後半60分過ぎに人に強いCBの山下達也を投入することで封じにかかった。

こうした完璧に近いネルシーニョの策により新潟は押し込まれる時間が続き、後半63分にはエリア内でサヴィオに決められてしまい、同点に追いつかれる。

【公式】ゴール動画:マテウス サヴィオ(柏)63分 柏レイソルvsアルビレックス新潟 明治安田生命J2リーグ 第30節 2019/8/31

■ テンポを落ち着かせる”ボランチ”小川佳純

我慢の時間帯が続く新潟は、疲れの見えるカウエに代えて小川佳純を投入。投入直後の小川は両手を上下させ落ち着くようにジェスチャー。相手に持っていかれたゲームコントロールを奪い返しにいった。

スペースを見つけてボールを受けたり、サイドに流れて起点となるなど小川周辺でボールが動き始める。78分にはボールを持って相手を外すことのできる本間至恩が入ることでボールをコントロールする時間を増やすことに成功するが、ゲームを盛り返すまでには至らず、江坂のエリア内で決定的なシュートがクロスバーに当たるなどピンチが続くがなんとか踏ん張り1−1のドローで試合を終えた。



■ 雑感

両サポーターの熱量がサッカー専用スタジアムでぶつかり合い、柏レイソルの力量が抜群に高いのもあって久しぶりにJ1の雰囲気を感じた試合であった。そして何より選手たちがいつも以上に強度をもってプレーできていたように思える。

そしてこの試合には久々にチーム愛よりもフットボールの面白さを感じるとなった。その大きな要因は柏の監督であるネルシーニョの采配であり、敵ながら後半の選手交代とシステム変更は見事な一手であった。勝負師の風格をを感じざるを得ない。

試合後に吉永監督は、後半押し込まれた要因について攻撃での問題と語っている。わたしは守備に問題があると考えているので疑問を感じているのだが、今シーズン残り1/3ということを考えると、守備のやり方を根本的に変えるのは現実的ではない。いかにゲームをコントロールする時間を増やして相手の攻撃の回数を減らすかというところにフォーカスしてると考えるのが妥当だろう。

正直わたしはこの考えを受け入れられてなかったのだが、岡山戦後半から続くシルビーニョのポジショニング整理によってボールの循環が良くなってるところにチームの成長を感じるので、今後はもっとゲームコントロールという観点を強く意識して観察したいと感じる試合であった。

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