昨季は2年連続のプレーオフ圏外で昇格に届かなかったアルビレックス新潟。今季は選手スタッフ共に大きく動き、是永社長が掲げた「早期の昇格」と「2030年ACL出場」に向けた過去最大の改革が行われた。
1ヶ月の高知キャンプを経て、ついに今週の日曜日に開幕が迫り、新生アルビが新たな1歩を踏み出す。
監督就任で吹くスペインの風
スペインの強豪バルセロナでスカウトやアカデミーダイレクターを歴任し、昨年はアメリカのニューヨークシティFCでコーチを務めていたアルベルト・プッチ・オルトネダ氏が就任。
トップチームでの監督経験は無いが、本来新潟に就任することがなかったであろう経歴をもつ人物が新潟の指揮を取ることに決まった。
スタッフ、コーチ陣も一新する。
解説でお馴染みであり博報堂でキャリアを積んでいた玉乃淳氏が新たに設立されたGMに就任。
アルベルト監督と共にマジョルカの久保建英を発掘したオスカルエルナンデス氏をヘッドコーチに、スペインのコルドバからエウ・ガヴィラン氏をフィジカルコーチに招聘。さらに新潟のメソッド部門のコーチ兼通訳を務めていた栗本悠人氏がテクニカルコーチに就任した。
通訳にはジェフ千葉の元監督エスナイデル氏の通訳を務めた仲村渠 アンドレス氏、スペインの指導経験がありアルベルト監督の書籍の監訳をされた村松 尚登氏の2人体制となり、
スペインやアルベルト監督にゆかりのあるスタッフが揃う。
監督交代が起きてもここまでコーチ陣の大きな変化がなかった新潟であった。しかし今年は「チームアルベルト」がパッケージで導入されたような形になり、アルベルト監督を支える盤石の体制となった。
国際色豊かな選手補強
選手補強でも今までのブラジルコネクションの強みを活かす路線とは違い、ウルグアイやスペインからも選手が加入することで国際色豊かな編成となる。
ボランチとしてチームを支えた戸嶋祥郎は柏レイソルに、J2得点王に輝いたレオナルドは浦和レッズに移籍し、大武峻はジュビロ磐田へ移籍。
センターラインの主力の穴が空いてしまったが、FWにはブラジル2部で得点ランキング2位の15得点を記録したファビオやインドリーグの得点王に輝いたペドロマンジーを。ボランチにはウルグアイリーグから守備的MFのゴンサロゴンザレスや長崎から島田譲を獲得し、CBには田上とスペインのテネリフェからマウロといった実力者が揃った。
空いた穴を埋めながらも、サイドならどこでもプレー可能で攻撃的な大本、中盤の選手ながら9得点を記録したロメロフランクを補強し編成に厚みを持たせた。

充実した高知キャンプ
ほとんどの練習にボールを使い、短時間で終わるスタイルは、選手からは楽しいといった声が多く充実ぶりが伺えた。
高知キャンプでの取り組みで大きな比重をかけていたのが「アグレッシブな守備」
昨年はサイドのユニットとレオナルドを中心とした魅力ある攻撃をみせ、守備では低いブロックを形成し舞行龍ジェームズと大武というJ2屈指の強さをもつセンターバック2枚を中心に相手の攻撃を防いでいた。
今季は高いディフェンスラインを維持したコンパクトでアグレッシブな守備を実行し、より新潟が試合を支配することを目指す。
高い位置からどのようにボールを奪っていくか、そして奪われた後の選手の即時奪取を目的としたチームのアクションに注目したい。
夏の移籍への対策を
シーズン前半がうまくいっても夏の選手流出をどう乗り切るかというところも昇格を目指す上で避けられない問題だ。
ヨーロッパへの移籍の話があった本間至恩やJ1からオファーのあった渡邉新太等、現実的に移籍をしてもおかしくない選手が在籍している。
玉乃淳GMを中心にクラブは流出が起こるものとして、準備をしているはずである。
もし仮にチームに大打撃を与えるような流出があったとしても、いかにスムーズにリカバリーできるかという点は昇格に向けて重要なポイントだ。
注目選手
今シーズン注目の選手としてシルビーニョを挙げたい。
多少難しい状況でもゴールを生み出す個人の能力は、転換期である新潟がまだ上積みできてない序盤で大きな助けになるのではないか。
昨季はパフォーマンスにムラがあり、良くも悪くも感覚的なプレーが多かった。
アルベルト監督の指導でシルビーニョにどのような変化が起きるかに注目したい。
「シルビーニョは信頼を示すと輝いてくれる選手」
と、都内のイベントで是永社長は彼をキャプテンに指名した意図の1つを明かした。
大きな信頼をきっかけにシルビーニョ自身のパフォーマンスを更に向上してほしいところである。
アルベルト監督が描き続けられるか
見守って欲しいと是永社長やアルベルト監督は様々なメディアを通して一貫して発信しているように感じる。
ひとつひとつ積み重ねてチームの成熟度を高めていく、そのための時間を確保したいことだろう。
時間を確保するために序盤の数試合は是が非でも勝ちたいところであるし、そうでないにしても継続した先の未来を思い描ける内容にしなければいけない。
おそらくであるが、昨年の問題の1つであったセットプレーの守備等、まだ充分に着手できず改善できてないポイントもあるだろう。そこから失点することでシーズン序盤はうまく勝ちに繋げないことも考えられる。
結果を出せないことによって空中分解してしまうことが最悪のシナリオとなる。キャンプを通して取り組んできたことを選手達が信じられなくなってしまうからだ。
そうならないよう、キャプテンである堀米とシルビーニョによる周囲のケアと、アルベルト監督のマネジメント力が鍵になる。
我々ファンやサポーターは少しでも良いと思ったプレーには、これまで以上のポジティブなアクションを起こしてサポートをしていくことで一体感が生まれるのではないだろうか。
「どんな絵の具で、どのような筆を使って、どのキャンバスに、どう絵を描いていくのか。今はそのスタート地点。選手と力を合わせて、きれいな絵を描いていきたい」(引用元:新潟アルベルト監督「力を合わせてきれいな絵描く」)
そうアルベルト監督は語っている。
ここまで度重なる監督交代により、絵を描く時間や環境が充分に揃えることができない状況が柳下監督退任以降続いていた。
水墨画を描きたいのに絵具しかなかったら、得意な絵を描くことは難しい。
今季は大きな変化があり賛否両論もあるだろうが、一貫性という部分では筋が通っているスタッフ、選手編成なのではないか。
アルビレックス新潟が描く「きれいな絵」を今年こそ継続して積み上げることで描き、魅力的かつ強さのあるサッカーを展開することに期待したい。

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